ドリームヒント校長 加藤琉魅子です。

前回のコラム【連載:セラピストと法律(1)】では

セラピストは国家資格は持ちませんが
身分保証法にも業法にも
抵触しない自由に出来る職業・自由業である

ということをお伝えしました。

けれど自由にできる職業だからといって
セラピストが何をやっても許される訳ではありません。

今回は人の身体に直接触れる仕事だからこそ
知らなかったでは済まされない法律『医師法』から見た
国家資格を持たないセラピストが侵してはならない境界線について
考えてみたいと思います。

医業とは

『医師法』に違反する行為とは?

『医師法』に違反する行為とは
具体的にはどんな行為でしょうか?

まずは『医師法』の法令文の第十七条を見てみましょう。

第十七条

医師でなければ、医業をしてはならない。

引用元:法令等データベースサービスより

実はこのように、医師法の法令文そのものには
「医業」が具体的にどんな行為なのかを定めた
文章はありません。

その代わりに、その解釈について
厚生労働省から出されている通達
以下の様に明記されています。

ここにいう「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。
引用元: 医師法第17条、歯科医 師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈についてより

つまり、診断や処置、投薬、手術など
専門的知識に基づいて行わないと
逆に健康を害す可能性のある行為を「医行為」と言い

そしてその医療行為そのものを
繰り返し受けてもらうことを目的として行って
生業としていることを「医業」とする

ということです。

 

もう一つ、医師法の中で
セラピストが見落としがちな条文があります。

第十八条

医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
引用元: 法令等データベースサービスより

つまり、医師の資格をはじめ
国家資格を持たないセラピストは

医師と思わせるような紛らわしい行いや
診断行為や治療類似行為・医療相談行為は
してはならない

ということです。

『医業』とみなされない行為

では、逆に「医業」とみなされない行為とは
どんな行為でしょうか?

これも、先ほどの
厚生労働省から出されている通達
明記されていました。

  • 水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること
  • 自動血圧測定器により血圧を測定すること
  • 新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを装着すること
  • 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)

引用元: 医師法第17条、歯科医 師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈についてより

この様に、検温や血圧測定など
簡単な健康に関する数値を計測しただけでは
医療行為とはみなされません。

ただ、これらの行為は、
測定結果を得ること自体を目的として
繰り返し来店してもらうと
それは反復継続した業とみなされるので
注意が必要です。

 

また、対面による行為だけではなく
電話やホームページなどでの医療相談に答えることについても

情報提供側が健康や医療に関する相談を受け
アドバイス・回答する場合
回答の内容によっては「医行為」とみなされます。

法令の解釈が難しい場合

介護保険制度ができてから、介護職の現場では
「医療行為ではない行為」に対して
拡大解釈や誤解から混乱が起きてきたことで
厚生労働省から先の通達が出されました。

分野は違いますが、具体的に書かれていますので
目を通しておくと良いでしょう。

では、国家資格を持たないセラピストがお客様の身体に触れて
医療行為にならずにできることはないのでしょうか?

国家資格を持たないセラピストが医師法を犯さないために

セラピストも国家資格ではないという一点だけで

どこかで法律に触れてるんじゃないか?

という不安をもっています。

セラピストにもこのような具体的な指針があればと
私自身もずっと思ってきました。

では、セラピストは医師法を犯さないためには
どんなことに注意をすれば良いのか、具体的に考えていきましょう。

サロンやメニュー名称に気をつける

前項でもお伝えしましたが
お客様に医療行為だと誤解させる行為自体が
医師法違反になってしまいます。

例えば

〇〇クリニーク」とか
メディカルエステ◯◯」というサロン名を見れば

ほとんどの人が病院をイメージするのではないでしょうか?

サロン名には、病院と間違えるような
名称を選ぶことは避けましょう。

 

同じく、メニュー名でも

「メディカルマッサージ」や
「メディカルアロマ」と聞けば

やはり医療的なイメージを抱かせてしまいます。

所属団体や仕入れメーカーの商品名だったとしても
誤解を受ける表記は避けるべきでしょう。

服装に気をつける

また、私はスクール生さんたちには
セラピストとしての自覚を持ってもらいたいと思い
「おうちサロンでも、自分なりの制服を決める」
ことを勧めています。

警官や消防士などの制服には
その業務に就いていることが
一目でわかるようにされています。

白衣も同じで
医療従事者であることの目印でもあるので
セラピストの制服にはふさわしいとは言えません。

もしセラピストが白衣を着ていれば
お客様の中には医師や看護師のイメージを
重ねてしまうことになるでしょう。

セラピストの着衣は

  • 清潔感があること
  • 動きやすいこと
  • お客様の身体にゾロゾロ触れることがないこと

などに気をつけて選ぶと良いと思います。

言葉使いに気をつける

リンパスクールの生徒さんにも
普段から厳しく指摘をしていますが
せっかくなので、NGワードを
まとめてみたいと思います。

  • 治療、診療
  • 診察、治癒、療法
  • 症状
  • 治す、良くなる

これらの言葉は、医師や医療行為を
イメージさせてしまいますので
絶対に使ってはいけません。

 

また、サロンの看板や新聞の折込み広告などで
未だに「リンパマッサージ」という
言葉を見つけて驚かされます。

【連載:セラピストと法律(1)】でもお伝えしましたが
「マッサージ」という言葉を使えるのは
マッサージ師という国家資格を持つ人だけです

頭に「リンパ」がついていても、いなくても
「マッサージ」という言葉は絶対に使わないでください。

サロンのパンフレットなどに載せる説明文や
メニュー名にも細心の注意が必要です。

セラピストが行う行為は
あくまでもリラクゼーションを目的とした
トリートメント=お手入れ
なのです。

 

では、こうした言葉を使わなければ
大丈夫なのでしょうか?

 

コミュニケーションに気をつける

セラピストが細心の注意をしていても
お客様からNGワードが発せられることがよくあります。

「肩が凝っているので、マッサージしてください」

そう言ってお客様が来店されたら
あなたはどうしますか?

 

リンパスクールのカウンセリング授業でも
そこはいつも問題になります。

お客様には法律の知識はありませんので
店を訪れてトリートメントを受ける時には
それがマッサージなのか、トリートメントなのか
国家資格なのか民間資格なのかを
意識している方は、少ないのではないでしょうか?

お客様とセラピストとの間の認識のズレは
早目に修正することが必要です。

 

もしもお客様が、話の端々で
NGワードを使っておられたら

私たちが行っているのは
あくまでもリラクゼーションを目的としたトリートメントで
治療や症状の改善が目的ではないことを
きちんとお伝えすることが大切
です。

セラピストのゴールは「症状の改善」ではない!

セラピストは民間の資格です。
国家資格をもつ分野からは
セラピストは常に一段低く見られます。

「たかがリラクゼーションだから」という言葉を浴びせられて
自信を失くすことも、よくあります。

 

ただ、トリートメントを続けていただくうちに
お客様が抱えていた不調や不具合が消えていくことが
よく起こります。

「血圧が安定してきたのよ」とか
「ぐっすり眠れるようになって嬉しい」
という言葉をいただいて、また元気づけられます。

何年も病院に通って治療しても改善しなかったことが
薬を飲み続けてもできなかったことが
トリートメントを続けて受けていただくことで
改善してしまうこともあります。

そのためお客様から「先生」と呼ばれたり
「このサロンなら、良くなるわよ」と
お友達を紹介していただくこともあります。

 

そうなった時に、道に迷わないように
私はスクール期間中に、生徒さんたちに対して
口を酸っぱくして話すことがあります。

 

もしトリートメントをした結果、
お客様の体調が改善したとしても、
それを自分の力と勘違いしてはいけません。
お客様がご自分の力で治されたのです。

 

肌に触れてトリートメントをすれば
全身の血行やリンパなど体液の流れが良くなり
体温が上がります。

体温が上がれば、免疫力も上がるので
お客様の健康を阻害していたものを取り除くこともでき
自然に改善していくのです。

 

セラピストは、医業とは違うかたちで
様々な方法を用いて体液循環が良くなることをすることで
お客様の回復力をお手伝いしているだけなのです。

 

セラピストが目標とするのは
あくまでも人間の身体が本来持っている、健康に生きる力
生命を維持するためのシステムが正常に働くための
手助けをすることなのです。

医師と国家資格の無いセラピストの仕事との違いを常に考え
自分自身に問い続けること忘れてはならないと思います。

【連載:セラピストと法律】

  1. セラピストは違法なのか?
  2. 医師とセラピストの違い

セラピストに必要な法律知識とは?

ここまで、セラピストと法律について
2回にわたってお伝えしてきましたが

では、実際にプロのセラピストとして
知っておくべき法律について
貴女はきちんと理解できているでしょうか?

プロとして活躍するなら
セラピストに関する法律をちゃんと理解すれば
安心して集客できるようになりますよ。

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