こんにちは。ドリームヒント、クリエイティブ綜合部の劉です。

さて、今回も前回に引き続き消費者委員会によって2011年に公開されたエステ・美容医療サービスに関する消費者問題についての実態調査結果と建議の概要を見ていきます。今回は同調査報告よりエステ・美容医療サービスにおける広告に関する調査報告を、マーケティング的観点からご紹介します。

本当にその広告の効果ですか?

広告にもいろいろな種類があります。特に最近ではスマートフォンの普及により、インターネットやアプリなどの新たな媒体も増えて、わたしたち個人事業主にも低コストで手軽に始められる宣伝方法ができてきました。しかし、媒体が増えたことで素人でも容易に広告宣伝が可能となった反面、その効果を客観的に図る人が減っているように思います。

例えば、わたしが担当しているクリエイティブ綜合部にWebデザインやパンフレット作成を依頼されるクライアントさんから、こんなお話をよく聞きます。

「友人のサロンはほとんどのお客さんがインターネットからだそうです。」

こういったお話になる度に、わたしは必ずこう聞き返します。

「その方の言う『インターネット』とは何のことでしょうか?」

インターネット上の広告媒体には様々なものがあります。ホームページやブログだけでなく、リスティング広告やアフィリエイト、メールマガジンなど、方法は多岐にわたります。このご友人は、いったいそのうちのどの媒体から、どのくらいの人数を集客できているのかは、往々にして明かしません。この方は恐らく、その広告の到達率(実際に広告を見た数)や反応率(広告を見た人数に対して実際に問合せや来店をした数)、そして費用対効果(1人の来店を得るためにかかった広告費用)の算出方法など、広告業界では当たり前の様に語られる言葉すら知らないことでしょう。

インターネットからの集客』とは、上記に挙げた様々な方法を複雑に繋ぎ合わせて総合的に行ってこそ効果がでるもので、大手デザイン事務所や広告代理店がうたっている『ホームページリニューアルによる集客アップ』など、とても現実的とは言いがたいものです。

わたしたち事業主は、ブログやホームページなどを作成するだけでなく、それぞれの違いを理解して使いわけて、さらにブログやホームページから直接の申込・お問合せがどの程度あるのかを冷静に見極めることが大切です。

顧客が実際に参考にする広告媒体とは?

前置きが長くなりましたが、今回の調査では実際にどの広告媒体がきっかけとなって来店していたのかを見ていきましょう。

美容クリニックに出向くきっかけとなった広告媒体
美容クリニックに出向くきっかけとなった広告媒体

今回の調査結果では、残念ながら美容クリニックのみでしたが、結果はたいへん興味深いものでした。平成19年までは断然優位だった雑誌媒体(青線)が平成20年からは年々下降している一方で、平成17年から徐々に上昇してきた電子媒体(赤線)が平成21年には雑誌媒体を追い抜くかたちで上昇しています。やはりここにもITの波が押し寄せているのを感じます。

では、実際に来店する際にサロンを選択するのに決め手になった情報収集手段も、電子媒体が優位なのでしょうか?

サロン・クリニック選択時の情報収集媒体(エステ・美容医療別)
サロン・クリニック選択時の情報収集媒体(エステ・美容医療別)

どうですか?おどろかれましたでしょうか?
そうなんです。電子媒体がどんなに優勢だとは言っても、まだまだ『友人・知人、またはその紹介』が半数近くを占めていますね。美容医療業界(青色)では同じくらいホームページも参考にされていますが、エステ業界(赤色)では友人や知人が経営するサロンや、友人・知人から紹介されたサロン、要するに口コミがホームページの1.5倍以上も参考にされていたんです。

わたしの個人的な推測ですが、恐らくこれは他人に相談しづらく情報収集が難しい美容医療と比べて、より身近になってきたエステだからこそ誰かの紹介なしにはなかなか信頼しづらい、と言うことだと思います。

では、次はそれぞれの媒体で、満足度はどう違ってくるのか見てみましょう。

サロン・クリニック選択時の情報収集媒体(満足感別)
サロン・クリニック選択時の情報収集媒体(満足感別)

おどろくことに、ほぼ全ての媒体で『不満なし(緑)』と『不満あり(赤)』がほぼ半々なのに対して、『友人・知人、またはその紹介』では6割強の方が『不満なし』と答えています。

やはり、どんなに優勢になってきているインターネット広告も、実際の人間関係が介在した口コミには及ばないんですね。日々の出会いを大切にしながら、既存のお客さまの満足度向上によるご紹介の捻出が一番『低コスト&低リスク』なんですね。

エステ業界の広告に関する規制

とは言え、全体の5割強の方が口コミ以外の方法で情報収集をしている以上、やはり新規顧客の開拓は永遠のテーマになってきます。そこで次は、あまり馴染みがない広告に関する法規制です。

エステ業界で使用する化粧品の取り扱いには薬事法が適応されます。では、サロン広告にはどんな法律が関係してくるのでしょうか?

広告の規制には、法律を基にして業種毎に『ガイドライン』が制定されています。ただ、エステ業界はまだまだ新しい業界の為、まだ特定のガイドラインは制定されていません。ここでちょっと安心したそこのあなた!残念でした!特定のガイドラインが制定されていないだけで、法的にしばりが無いわけではありません

お肌や髪、爪など身体のお手入れをしたり、痩身によって身体を変化させる施術を施す、と言う観点から、現時点ではエステ業界の広告には『医療広告ガイドライン』を適応することになっています。

参考までに、いくつか代表的な規制をご紹介しておきます。

【医療法における代表的な広告規制】

  • 施術結果や顧客満足度などの結果の広告(事実であっても不可)
  • 芸能人等が受診している旨の広告(事実であっても不可)
  • 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
  • 他の医療機関(サロン)と比較して優良である旨の広告(比較広告)
  • 体験談・ビフォー&アフター写真の紹介
  • 医学的・科学的な根拠に乏しい文献やテレビの健康番組での紹介による施術や生活改善法等の紹介
  • 費用を強調した広告等

ちょっと難しいでしょうか。今回の調査報告には、代表的な規制対象となる事例も紹介されていました。

医療法(医療広告ガイドライン含む)に照らして問題があると思われる広告の事例
医療法(医療広告ガイドライン含む)に照らして問題があると思われる広告の事例

らしい』広告を作ろうとして気軽に使ってしまいそうな、かなりヒヤっとする表現が多く含まれていました。みなさんも気をつけてください。

また今回の調査報告には、この『医療広告ガイドライン』の広告規制の対象範囲についても記載されています。

医療広告ガイドライン
医療広告ガイドライン

これを見る限りでは、オフィシャルホームページは規制対象外になるようです。それでも問題になる危険性があるようなきわどい表現は、なるべく避けたほうがよさそうですね。

まとめ

先週から2週にわたりご紹介してきましたエステ・美容医療サービスに関する消費者問題についての実態調査結果と建議の概要、今回はマーケティングの入り口の様な切り口でご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。恐らくみなさんは広告を作成する際にこうしたマーケティングを行うことは少ないと思いますが、実際に潜在顧客の動向を知ることはとても大切なことです。

マーケティングと言っても、今回のような調査はほんの入り口に すぎず、まだまだマーケティングもPRも掘りだすと奥深いものです。またこうしたマーケティングを基礎として、その上に広告デザインと言うものが存在しま す。ただの色づかいや写真じゃないんですよ!(と、クリエイティブ綜合部らしいところをのぞかせてみました。)その為、実際に一個人事業主が実践しようと 思うと、広告代理店やコンサルなどの専門業者に依頼することになり、膨大な費用と時間がかかるものです。(まともなコンサルやマーケティング業者・広告代 理店を探す方が労力がいりそうですが…。)

いまの時代、今回ご紹介したように政府機関や種々のNPO法人等がいろいろな調査結果がオンラインで公開されています。またマーケティングや業界についての考察などを公開しているブログもたくさんあります。ブログ記事となると情報の精査が必要になってきますが、事業主としては外注丸投げではなく、まずは自分でこうした資料を利用していくところから始められると良いと思います。これからもみなさんの参考になるようなものがあれば、コラムにてどんどんご紹介していきますので、ご期待ください!

【連載:エステ・美容医療サービスに関する消費者問題について考える】

  1. エステ業界の消費者問題を知る
  2. エステ業界の広告